P.N.テイラースウィフトさんからお便りいただきました。(一部変更)
ご質問ありがとうございます。
質問は以下から受け付けておりますので、よろしければご連絡ください。
(ご質問がある方)
歌なんてとんでもないです。お便りいただけただけで光栄です。
おさらい
コンパクトの定義は以下のようであった。(詳しくは位相におけるコンパクト性)
今回の問題の気づき
コンパクトは集合によっても変わるが、位相によってもコンパクトであるかどうかが決まる。
だから正式には\((X,\mathcal{O})\)はコンパクトであると書いている。
問題解説
(1) 解説
(1)は開被覆を具体的に考えたら理解できる。
今回の\(\mathbb{Q}\)の開集合は、空集合と全体集合と自然数\(n\)以上の開区間である。
しかし、開被覆は全体集合\(\mathbb{Q}\)を覆ってないといけない。
つまり開被覆の要素であるどこかの開集合が、\(-1\)を含んでいるよと対応する必要がある。
\(\mathbb{Q}\)の開集合が空集合と全体集合と自然数\(n\)以上の開区間であることを思い出すと、
自然数の範囲でどんだけ頑張ったところで全体集合を含まない限り\(-1\)に対応することができない。
よって、今回\(\mathbb{Q}\)の開被覆の要素として必ず全体集合\(\mathbb{Q}\)が入っている。
そしたら有限部分開被覆として\(\{\mathbb{Q}\}\)を持つことができるので、
\((\mathbb{Q},\mathcal{O}_1)\)はコンパクトである。
(2) 解説
コンパクトの定義をさらっとおさらいしておくと以下のようになる。
「全体集合の開被覆を好きに考えて、エコな人が捌いていくと有限個に捌くことができる。」
これを否定するのでどう頑張っても有限個に捌くことができない開被覆の例を1つ挙げれば良い。
さて、(1)と(2)の決定的な違いは、n以上を開集合として定めますよ。と宣言するnの範囲が
\(\mathbb{N}\)から\(\mathbb{Z}\)に変わったことである。
これによって次のような開被覆を考えることになった。
\(\{(n,\infty)|n\in \mathbb{Z}\}\)
さて、問題はこの開被覆たちは、有限部分開被覆を持たないことを言えるかどうかが鍵となる。
陥りがちな考え
これから開被覆\(\{(n,\infty)|n\in \mathbb{Z}\}\)について考えていく。
これが有限部分開被覆でないことを示そうとすることに違和感を持った人もいるかもしれない。
\(\{(n,\infty)|n\in \mathbb{Z}\}\)について\((-100,\infty),(3,\infty)(4,\infty)\)とかを考える場合、
「\((3,\infty),(4,\infty)\)は捌いて\((-100,\infty)\)でええやん。」となる。
この考え方を用いれば、全ての開集合を比較して一番大きい開集合を考えたら有限個までに絞れるのではないのかと考えた方は有限部分開被覆でないことを示そうとすることに違和感を持っただろう。
しかし、無限と非有界という世界は私たちの想像を裏切ることが往々にしてある。
まず、全ての開集合を比較するということは\(n\in \mathbb{Z}\)の最小値を考えようということだが、これは有界である時にしかできない芸当である。
(さらに言うと有界でも最小値が定まるとは限らない。)
しかし、\(n\in \mathbb{Z}\)の中から有限個という個数制限があれば有界と言えるが、
今の考察対象は無限個であり、有界でないため、そもそも最小値を考えることができない。
このように、無限や非有界という世界でイメージだけで戦うことは罠に陥る可能性がある。
そこで、有限部分開被覆でないことを示す時に背理法で有限部分開被覆があると仮定することで
話を有限で有界という考えやすい世界に移す事ができる。
有限部分開被覆を持たないことの解説
これから\(\mathbb{Q}\)の開被覆\(\{(n,\infty)|n\in \mathbb{Z}\}\)が有限部分開被覆を持たないことを示す。
上記の理由で有限部分開被覆\(\{(n_i,\infty)|i=1,2,3,\cdots,m\}(n_i \in \mathbb{Z})\)が存在すると仮定して背理法で示す。
\(\{(n_i,\infty )|i=1,2,3,\cdots,m\}\)について有限個であるから、\(n_i\)の最小値が存在する。
それを\(n_{min}:=\min_{i=1,2,3,\cdots ,m}n_i\)と定める。
そうすると、有限部分開被覆の要素の開集合の中には\(n_{min}\)を引き受けてくれるものはいない。
これは\(\mathbb{Q}\)の開被覆であることに矛盾。
(開被覆は\(\mathbb{Q}\)の全ての要素に対応する開集合を持ってないといけないからだ。)
おまけ
途中の説明で無限と非有界は私たちの想像を大いに裏切ってくると書いた。
私が一番驚いたことは、自然数全体の集合と有理数全体の集合の濃度は一緒だということだ。
このように無限と非有界などは数学の世界の定義に忠実に従ってデリケートに扱うと良い。
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