位相における連続の定義の理由(2)

位相幾何学
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位相における連続の定義の理由(1)はこちら。

前回までのおさらい

位相における連続の定義は以下のようであった。

位相における連続

\((X,\mathcal{O}_X),(Y,\mathcal{O}_Y)\)をどちらも位相空間とする。

写像\(f:X \rightarrow Y\)が連続であるとは、以下の条件を満たすこと。

\(^{\forall}O_Y \in \mathcal{O}_Y\)について\(^{\exists}O_X \in \mathcal{O}_X \hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm}f^{-1}(O_Y)=O_X\)

そして距離空間における連続の定義は以下のようであった。

距離空間における連続

\((X,d_X),(Y,d_Y)\)をどちらも距離空間とする。

写像\(f:X \rightarrow Y\)が連続であるとは、以下の条件を満たすこと。

\(^{\forall} x \in X ,\)\(^{\forall} \epsilon >0\)について\(\hspace{2mm} ^{\exists} \delta >0\)\(\hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm} f(B(x,\delta))\subset B(f(x),\epsilon)\)

今回はなぜこの距離空間における定義から位相空間における定義が生まれたのかを見ていく。

距離空間における連続との同値命題

この二つの連続の定義をつなぐ架け橋は、以下の距離空間における連続との同値命題だ。

距離空間における連続との同値命題

距離空間における連続の定義と以下の命題は同値。

距離空間\((X,d_X),(Y,d_Y)\)について写像\(f:X \rightarrow Y\)が以下を満たす。

\(^{\forall}O_Y \)(Y上での開集合)について\(\hspace{2mm}^{\exists}O_X \)(X上での開集合)\( \hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm}f^{-1}(O_Y)=O_X\)

\(^{\forall}O_Y \in \mathcal{O}_Y\)について\(^{\exists}O_X \in \mathcal{O}_X \hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm}f^{-1}(O_Y)=O_X\)

位相における連続の定義が上記だったことを踏まえると、これから発想を得たことは明らかだ。

では、早速証明していく。

証明

同値命題を示すためには、両方向の矢印が成り立つことを示す必要がある。

まず、以下のような片方向の矢印を示す。

距離空間\((X,d_X),(Y,d_Y)\)について写像\(f:X \rightarrow Y\)を考える。

\(^{\forall} x \in X ,\)\(^{\forall} \epsilon >0\)について\(\hspace{2mm} ^{\exists} \delta >0\)\(\hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm} f(B(x,\delta))\subset B(f(x),\epsilon)\)

\(\Rightarrow ^{\forall}O_Y \)(Y上での開集合)について\(\hspace{2mm}^{\exists}O_X \)(X上での開集合)\( \hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm}f^{-1}(O_Y)=O_X\)

示すことの整理  証明する前に示すことを整理しておく。

Yから任意に開集合\(O_Y \)をとり、\(f^{-1}(O_Y)\)がX上で開集合となることを示す。

ここで距離空間における開集合とはなんだったかを以下に示す。

\(O\)が開集合であるとは、\(^{\forall} x\in O\)について\(^{\exists}\epsilon >0 \hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm}B(x,\epsilon ) \subset O\)

このことを踏まえると、今から示すことは以下のことだ。
「\(f^{-1}(O_Y)\)から任意に\(x\)についてうまい具合に\(\epsilon \)近傍をとると、\(f^{-1}(O_Y)\)にすっぽり含まれる。」

(証明)

\(^{\forall}O_Y \)(Yの開集合)について、\(^{\forall} x\in f^{-1}(O_Y)\)を考える。

\(f(x) \in O_Y\)であり、開集合の定義から、\(^{\exists }\epsilon >0 \hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm} B(f(x),\epsilon ) \subset O_Y\)

仮定を発動すると、\(^{\exists} \delta >0\)\(\hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm} f(B(x,\delta))\subset B(f(x),\epsilon)\)

これより\(f(B(x,\delta))\subset B(f(x),\epsilon)\subset O_Y\)で、\(f(B(x,\delta))\subset O_Y\)はすなわち\(B(x,\delta)\subset f(O_Y)\)

赤線のみ確認すると、
「\(f^{-1}(O_Y)\)から任意に\(x\)についてうまい具合に\(\delta \)近傍をとると、\(f^{-1}(O_Y)\)に含まれる。」
ということだ。

\(\delta \)と\(\epsilon \)という記号の違いを無視すると、これはまさに示したかったことだ。

よって片方向の矢印は示された。

次にもう片方の矢印である以下を示す。

距離空間\((X,d_X),(Y,d_Y)\)について写像\(f:X \rightarrow Y\)を考える。

\( ^{\forall}O_Y \)(Y上での開集合)について\(\hspace{2mm}^{\exists}O_X \)(X上での開集合)\( \hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm}f^{-1}(O_Y)=O_X\)

\(\Rightarrow^{\forall} x \in X ,\)\(^{\forall} \epsilon >0\)について\(\hspace{2mm} ^{\exists} \delta >0\)\(\hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm} f(B(x,\delta))\subset B(f(x),\epsilon)\)

示すことの整理 証明する前に示すことを確認しておく。

\(X\)から任意に点\(x\)をとってきて、\(f(x)\)周りに任意に\(\epsilon\)近傍をとる。
うまい具合に\(x\)周りに\(\delta\)近傍をとり\(f\)で送ると、先ほどの\(\epsilon\)近傍に含まれることを示す。

(証明)

\(^{\forall} x \in X ,\)\(^{\forall} \epsilon >0\)について\(B(f(x),\epsilon)\)を考える。

さて、近傍は距離空間において開集合であることを思い出すと、
\(B(f(x),\epsilon)\)は開集合であるから、仮定を発動すると、

\( f^{-1}(B(f(x),\epsilon))\)はXで開集合となる。

さて、開集合の定義が以下のようであることを思い出すと、開集合の定義より

\(O\)が開集合であるとは、\(^{\forall} x\in O\)について\(^{\exists}\epsilon >0 \hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm}B(x,\epsilon ) \subset O\)

\( x\)について\(^{\exists}\delta >0 \hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm}B(x,\delta ) \subset f^{-1}(B(f(x),\epsilon))\)

\(B(x,\delta ) \subset f^{-1}(B(f(x),\epsilon))\)より\(f(B(x,\delta )) \subset (B(f(x),\epsilon))\)

赤線のみを確認すると、まさに示したいこととなっている。

これより両方向の確認ができた。

おまけ

この証明はXの世界で起こっていることなのか、Yの世界で起こっていることなのかを確認しないとかなり複雑な証明だ。

証明を読む際には、ぜひ白紙とペンを用意して図をおこしながら確認してほしい。

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