1点を含む位相の問題(質問)

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P.N.恋するうさぎちゃんからお便りをいただきました。(一部変更)
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(ご質問がある方)

お便り

件名:なぜ幾何を好きになるとこんなにも苦しいのでしょう。

無限集合\(X\)に対して、1つの要素\(p\in X\)を選ぶ。
そして集合族\(\mathcal{O}=\{O \subset X|p \in O\}\)を定める。

(1)集合族\(\mathcal{O}\)は\(X\)の位相にはなれない。
 しかし、\(\mathcal{O}\)に一つの要素(集合)を追加すると位相になる事ができる。
位相になれない理由と一つの要素を定めよ。

(2)\(\mathcal{O}\)に(1)の一つの要素を加えた新たな集合族を\(\mathcal{O}’\)とする。
この時、\((X,\mathcal{O}’)\)はコンパクトかどうか判定せよ。

上の2題をお願いします。
ご教授いただければ、茶茶の数学さんに恋します。

幾何に苦しんだ時はシンプルな頭で考えてみてください。頭が熱をおびてきますよ。

おさらい

位相の定義とコンパクトの定義は以下のようであった。
(詳しくは位相位相におけるコンパクト性)

位相

\(\mathcal{O}\)は集合\(X\)の部分集合族とする。
このとき、\(\mathcal{O}\)が位相であるとは、次の条件を満たすもの。

(1)\( \emptyset ,X \in \mathcal{O}\)

(2)\(^{\forall}O_1,O_2 \in \mathcal{O}\)について\(O_1 \cap O_2 \in \mathcal{O}\)

(3)\(^{\forall}\{O_\lambda \}_{\lambda \in \Lambda} \subset \mathcal{O}\)について\( \cup_{\lambda \in \Lambda} O_\lambda \in \mathcal{O}\)

このとき、位相\(\mathcal{O}\)の元をXの開集合とよぶ。

コンパクト

位相空間\((X,\mathcal{O}_X)\)がコンパクトであるとは、

\(X\)の任意の開被覆\(\{O_\lambda |\lambda \in \Lambda \}\)について
その有限部分開被覆\(\{O_i | i \in A \} \subset \{O_\lambda |\lambda \in \Lambda \}\)が存在することである。

問題解説
問題

無限集合\(X\)に対して、1つの要素\(p\in X\)を選ぶ。
そして集合族\(\mathcal{O}=\{O \subset X|p \in O\}\)を定める。

(1)集合族\(\mathcal{O}\)は\(X\)の位相にはなれない。
 しかし、\(\mathcal{O}\)に一つの要素(集合)を追加すると位相になる事ができる。
位相になれない理由と一つの要素を定めよ。

(2)\(\mathcal{O}\)に(1)の一つの要素を加えた新たな集合族を\(\mathcal{O}’\)とする。
この時、\((X,\mathcal{O}’)\)はコンパクトかどうか判定せよ。

(1)は位相になれないという事だから、位相の3つの条件どれかをクリアしていないことになる。

初めから見ていくと、今回の問題は実は1発目にエラーが発生していた事がわかる。

位相の条件(1)\( \emptyset ,X \in \mathcal{O}\)

今回の集合族\(\mathcal{O}=\{O \subset X|p \in O\}\)の要素となる集合は、\(p \)が入っているという絶対の条件がある。

全体集合\(X\)はそもそも\(X\)から点\(p\)をとってきたことを思い出せば、
\(\mathcal{O}=\{O \subset X|p \in O\}\)の要素の一員として入っていることがわかる。
しかし当然ながら空集合の中には要素がないため、\(\mathcal{O}=\{O \subset X|p \in O\}\)の要素として入れることはできない。

そのため、この集合族\(\mathcal{O}\)の要素として空集合は入っていないため、
\(X\)の位相になることはできない。

この事がわかれば、求める一つの要素の正体とは空集合\(\hspace{3mm}\emptyset \hspace{3mm} \)なのではないかと予想できる。

そのため、\(\mathcal{O}=\{O \subset X|p \in O\}\)に空集合を加えた集合族を\(\mathcal{O}”\)とし、位相の条件(2)(3)をクリアしているかをチェックする。

位相の条件(2)(3)

(2)\(^{\forall}O_1,O_2 \in \mathcal{O}\)について\(O_1 \cap O_2 \in \mathcal{O}\)

(2)では、集合族\(\mathcal{O}”\)から2つの集合を取り出し、交わりも\(\mathcal{O}”\)に入っていることを言えば良い。

2つの集合のうちどちらかが空集合だった場合、交わりも空集合となるのでOK.

どちらも空集合でない場合、絶対にどちらも\(p\)を含んでいる。
そのため、交わりをとったとて\(p\)を含んでいる。
\(p\)を含んでいる集合は\(\mathcal{O}”\)の入団資格をもらえるので、OK.

これより\(\mathcal{O}”\)は位相の条件(2)をクリアできた。

(3)\(^{\forall}\{O_\lambda \}_{\lambda \in \Lambda} \subset \mathcal{O}\)について\( \cup_{\lambda \in \Lambda} O_\lambda \in \mathcal{O}\)

(3)では集合族\(\mathcal{O}”\)から好きなだけ集合を持ってきてその和集合も
\(\mathcal{O}”\)に入っていることを言えば良い。

\(\mathcal{O}”\)から持ってきたものが全て空集合の場合、和集合をとってもどうせ空集合なのでOK.

\(\mathcal{O}”\)から持ってきたもののうち1つでも空集合でないものがあった場合、
その1つは絶対に\(p\)を含んでいる。
その1つがいるので、和集合ももちろん\(p\)を含んでいる。
\(p\)を含んでいる集合は\(\mathcal{O}”\)の入団資格をもらえるので、OK.

これより\(\mathcal{O}”\)は位相の条件(3)をクリアできた。

よって、晴れて\(\mathcal{O}”\)は\(X\)の位相となれた。
すなわち\(\mathcal{O}’\)の正体は\(\mathcal{O}”\)だった事が判明した。

問題(2)の難しさ
問題

無限集合\(X\)に対して、1つの要素\(p\in X\)を選ぶ。
そして集合族\(\mathcal{O}=\{O \subset X|p \in O\}\)を定める。

(1)集合族\(\mathcal{O}\)は\(X\)の位相にはなれない。
 しかし、\(\mathcal{O}\)に一つの要素(集合)を追加すると位相になる事ができる。
位相になれない理由と一つの要素を定めよ。

(2)\(\mathcal{O}\)に(1)の一つの要素を加えた新たな集合族を\(\mathcal{O}’\)とする。
この時、\((X,\mathcal{O}’)\)はコンパクトかどうか判定せよ。

先ほど示したように\(\mathcal{O}’=\{\emptyset \}\cup\{O \subset X| p \in O\} \)であった。

(2)は\((X,\mathcal{O}’)\)はコンパクトかどうかという問題であった。

私たちはコンパクトであるのなら、以下のことを示せば良いと知っている。
「好きに全体集合の開被覆をとってきて有限部分開被覆をもつ。」
またコンパクトでないのなら、以下のことを示せば良いと知っている。
「ある全体集合の開被覆をとってくると、有限部分開被覆をもたない。」

しかし残念ながら今回は「コンパクトかどうか」と聞かれているため、
どっちで話を進めればいいかわからない。

そんな時は以下の例を思い出してみてほしい。
「目の前にはどんなに衝撃を与えても壊れない椅子があります。」という場面を想像する。
そうすると「本当か?」と疑わしい気持ちを持ちながらある程度の衝撃を与えようとするだろう。

コンパクトかどうかという問いかけも同じである。
「どんな全体集合の開被覆を与えても有限開被覆を持ちます。」というのがコンパクトの主張だ。
そうすると「本当か?」と疑わしい気持ちである程度開被覆を考えてみたら良いのだ。

問題(2)の解説
\(\mathcal{O}’=\{\emptyset \}\cup\{O \subset X| p \in O\} \)

(2)\((X,\mathcal{O}’)\)はコンパクトかどうか。

いくつか開被覆の例を試してみて欲しい。

\(\mathcal{O}’\)の入団資格として空集合以外は絶対\(p\)を持ってないといけない。

\(\{a,p\}(a\in X-\{p\})\)という\(p\)とそれ以外の1つの\(X\)の要素を持ってきた2点集合は\(\mathcal{O}’\)に入団でき、開集合となる。

そうするとそれらをかき集めた集合族\(\{\{a,p\}|a\in X-\{p\}\}\)は\(X\)の開被覆となる。

しかし、この開被覆1つの要素も捌く事ができない。
捌こうものなら\(p\)でない方が被覆できていない状況になってしまうからだ。

よってこのような例が見つかったため、(2)\((X,\mathcal{O}’)\)はコンパクトではない。

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