双曲幾何

平面幾何学
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あらすじ

平面幾何は今までこのように条件を付与していった。
抽象幾何結合幾何(共線的でない3点の存在)→計量幾何(距離関数の登場)
パッシュ幾何(直線を1本抜くと綺麗に2分される)→分度器幾何(角度の登場)
中立幾何(三角形の合同条件が使える)

そして中立幾何にある条件を付与することで、ユークリッド幾何の定義を確認した。
その条件とは、EFPと呼ばれるユークリッドの平行線公理のことだった。

EPP(ユークリッドの平行線公理)

\(^{\forall }l\in \mathcal{L},^{\forall }P \in \mathcal{P}(P\notin l)\)について、

\(^{\exists_1 }l’ \ni P \hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm}l\parallel l’\)

では、中立幾何でユークリッド幾何と別の世界線に行ってしまった幾何はどんなものだろう。
すなわち中立幾何でEFPを満たさない平面はどのようなものだろうか。

双曲幾何

中立幾何でEFPを満たさない例として双曲幾何というものがある。

双曲幾何

HPPを満たす中立幾何を双曲幾何という。

この定義ではHPPという部分が明らかになっていないので、ここを解説していく。

HPP
HPP(双曲平行線公理)

\(^{\forall }l\in \mathcal{L},^{\forall }P \in \mathcal{P}(P\notin l)\)について、

\(^{\exists }l_1 \ni P,l_2 \ni P(l_1\neq l_2) \hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm}l\parallel l_1,l\parallel l_2\)

ざっくりいうと、
直線とその直線上にない点を好きにとってきて、その点を通る平行線が2本以上は引けるよね
ということだ。

EPPとHPP

ここで、EPPとHPPの主張をおさらいする。

EPPは
どんな直線とその直線上にない点の組合せでも、平行線は必ず1本だよね」と主張する。

また、HPPは
どんな直線とその直線上にない点の組合せでも、平行線は必ず2本以上だよね」と主張する。

そうすると残っている世界として考えられるのは、
「どんな直線とその直線上にない点の組合せでも、平行線は必ず引けないよね」という世界。
もしくは
「平行線の本数は点と直線の組合せによって違うよね」という世界の2つだ。

ここは大切なところなので、少し身近な例をだすと
「どんな人でも、ペットは1匹のみ飼っている」世界と
「どんな人でも、ペットは2匹以上飼っている」世界を今までで考えた。
そうすると、残りの世界は
「どんな人でも、ペットを飼っていない」という世界と、
「ペットを何匹飼っているかは人による」という世界の2つが有り得るというのと、
同じ意味で言っている。

さて、それを踏まえた上で、
「どんな直線とその直線上にない点の組合せでも、平行線は必ず引けないよね」という世界と
「平行線の本数は点と直線の組合せによって違うよね」という世界は
果たして中立幾何において有り得るのだろうか。

平行線がない世界は実現可能か?

題名にはこのように書いたが、これは明らかに実現不可能だ。
それは、平行線の定義で、自分は自分自身と平行だという定義があるからだ。

それを踏まえた上で、この問いは
「どんな直線とその直線上にない点の組合せでも、平行線はないという中立幾何は有り得るか。」
という意味で題名を記述している。

さて、このような世界は構築できるのだろうか。

平行線の本数がまばらな世界は実現可能か?

この問いは
「平行線の本数が直線とその直線上にない点の組合せで、変わるという中立幾何は有り得るか。」という意味で題名を記述している。

さて、このような世界は構築できるのだろうか。

おまけ

さて、この2つの問いについてだが、易々と証明できるものではない。
そのため、別の記事としてこれをあげる予定だ。

2つの問いに対して答えが出た時、私たちは中立幾何について衝撃の事実を目の当たりにする。

参考文献

(1) 寺垣内 政一(2019) 『平面幾何の公理的構築』広島大学出版会

(2) Richard S.Millman and George D.Parker(1991)
『Geometry:A metric approach with models』Undergtaduate Texts in Mathematics

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