あらすじ
平面幾何は今までこのように条件を付与していった。
抽象幾何→結合幾何(共線的でない3点の存在)→計量幾何(距離関数の登場)
→パッシュ幾何(直線を1本抜くと綺麗に2分される)→分度器幾何(角度の登場)
さて、ここからの世界では三角形の合同とは何かということに焦点をおく中立幾何に突入する。
中立幾何
この定義をみると圧倒的存在感を放っているのが、SASという単語だ。
しかし怖がることはなく、SASは実は中学校の頃から慣れ親しんでいる「あれ」なのだ。
三角形
SASの主人公的な存在、三角形について平面幾何学的に定義しておく。
分度器幾何のところで線分と角度の定義を確認した。(詳しくは分度器幾何)
線分
異なる2点\(A,B\)に対し、
\(\overline{AB}=\{C\in \mathcal{P}|A-C-B\}\cup \{A,B\}\)をAからBまでの線分という。
また、\(AB=d(A,B)\)を\(\overline{AB}\)の長さと呼ぶ。
これをもとに三角形を定義する。
三角形
共線的でない3点\(A,B,C\)について
\(\triangle ABC=\overline{AB} \cup \overline{BC} \cup \overline{CA} \hspace{2mm}\)を三角形\(ABC\)という。
点\(A,B.C\)を\(\triangle ABC\)の頂点という。
線分\(\overline{AB},\overline{BC},\overline{CA}\)を\(\triangle ABC\)の辺という。
また、\(\angle CAB ,\angle ABC ,\angle BCA\)を\(\triangle ABC\)の角という。
それぞれの角を\(\angle A,\angle B,\angle C\)と表すこともある。
この定義で触れた角については、分度器幾何から角度が測定できるようになった。
分度器関数
パッシュ幾何\((\mathcal{P},\mathcal{L},d)\)における角全体の作る集合族を\(\mathcal{A}\)とする。
関数\(m:\mathcal{A}\rightarrow \mathbb{R}\)が次の3つの条件を満たすとき、分度器関数と呼ばれる。
\(1.\angle ABC \in \mathcal{A} \rightarrow 0<m(\angle ABC)<180\)
\(2.\overrightarrow{BC}\)の定める半平面\(H\)を考える。
\(\hspace{5mm}\)このとき\(^{\forall}\theta \in (0,180) \hspace{3mm}^{\exists _1}\overrightarrow{BA}\hspace{2mm}s.t.\hspace{2mm}m(\angle ABC)=\theta\)
\(3.D\in int(\angle ABC)\Rightarrow m(\angle ABD)+m(\angle DBC)=m(\angle ABC)\)
このとき、値\(m(\angle ABC)\)をその角の角度とよぶ。
これをもとにいよいよ合同とは何かを数学的に、平面幾何学的に定義する。
合同
その後、SASの定義に欠かせない合同という性質を定義しておく。
合同
分度器幾何において、2つの三角形\(\triangle ABC,\triangle DEF\)を考える。
\(^{\exists }f:\{A,B,C\}\rightarrow \{D,E,F\}\)(\(f\)は全単射)
\(s.t.\hspace{2mm}\overline{AB}\simeq \overline{f(A)f(B)}\hspace{2mm},\hspace{2mm}\overline{BC}\simeq \overline{f(B)f(C)}\hspace{2mm},\hspace{2mm}\overline{CA}\simeq \overline{f(C)f(A)}\)
\(\hspace{10mm} \angle A\simeq \angle f(A)\hspace{2mm},\hspace{2mm}\angle B\simeq \angle f(B)\hspace{2mm},\hspace{2mm}\angle C\simeq \angle f(C)\)
となる時、\(\triangle ABC\)と\(\triangle f(A)f(B)f(C)\)は合同であるという。
特に、\(f(A)=D,f(B)=E,f(C)=F\)ならば、\(\triangle ABC \simeq \triangle DEF\)と表す。
三角形の頂点を写像により1対1対応させて、それぞれの辺と角が等しい時、
我々はその2つの三角形を合同と呼ぶ。ということだ。
さて、この合同という定義を踏まえた上で中立幾何とは何かを解説する。
SAS
SAS
SAS(Side-Angle-Side Axiom)とは2つの三角形\(\triangle ABC,\triangle DEF\)が
\(\overline{AB}\simeq \overline{DE},\angle B\simeq \angle E,\overline{BC}\simeq \overline{EF}\)を満たすならば、
\(\triangle ABC \simeq \triangle DEF\)であることだ。
つまりSASとは、中学の時の合同条件として覚えさせられた、
「三角形の2辺とその間の角がそれぞれ等しいならば合同である。」そのものだ。
おまけ
最初の疑問が解消されてくれたら嬉しい。
参考文献
(1) 寺垣内 政一(2019) 『平面幾何の公理的構築』広島大学出版会
(2) Richard S.Millman and George D.Parker(1991)
『Geometry:A metric approach with models』Undergtaduate Texts in Mathematics
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