はじめに
とある学校でこんな話し合いがされた。
0以上の偶数と奇数どちらの方が多いだろうか。
ある生徒はこう考えた。
1と2,3と4,5と6・・・って対応させていくと、0が余るから偶数の方が多い。
次に別の人はこう考えた。
0と1,2と3,4と5・・・って対応させていけば、偶数も奇数も同じ個数だ。
このA,Bの主張はどちらが正しいのだろうか。
また、先生が別の質問を投げかけた。
自然数と0以上の奇数、どちらの方が多いだろうか。
ある生徒はこう答えた。
いや0以上の奇数も自然数なんだから、自然数の方が多いでしょ。
0と1,1と3,2と5・・・って対応させていけば、自然数も奇数も同じ個数だ。
このA,Bの主張はどちらが正しいのだろうか。
今回はこの問題について解決していく。
濃度
個数という言葉は有限個の時には区別ができるが、無限集合の場合,区別をつけることができない。
そこで無限集合の中にも大小の違いをつけるために,濃度というものを定義する。
先に注意しておくと、Aの濃度が有限個,すなわちn個と表せる場合は|A|=nと書く。
ただこの定義を見ても「対等? 同値類?」と疑問に残ると思うので、説明していく。
対等
ここで注目して欲しいのが、全単射が1つでもあれば、対等であるということだ。
すなわち最初の疑問に対しての解答がここで得られる。
確かにA君の主張もB君の主張も理にはかなっていて考え方は素敵なのだが、
数学では矛盾を防ぐために全単射という架け橋が1本でもあれば、対等だというルールを作る。
そのため、数学上ではB君が正しいということになる。
(むしろ一般的には奇数と自然数の濃度が同じだというA君の方が受け入れられやすいだろう。)
同値類(ざっくり説明)
同値類についてはきちんと定義するには、同値関係で割るという操作を必要とするのだが、
ややこしいのでここでは同値類を定義する心がけを知ってもらいたい。
今回で言うと「この対等という関係を持ったものは、一緒とする世界を作りましょう」とすることだ。
確かに無限の世界では、個数で表すことができないので、
「自然数全体の集合の濃度と一緒だよね。」とか「実数全体の集合の濃度と一緒だよね。」とか
代表的な集合を持ってきて紐づけるということで無限集合を表していこうとする。
もう一度濃度
ここから濃度についてもう少し具体的にみていく。
最初の疑問「0以上の偶数と奇数どちらが多いか。」という問いについて考える。
これからは0以上の偶数全体の集合をG,0以上の奇数全体の集合をKとする。
対等の定義の時に強調したように「全単射という架け橋が1個でも見つかれば対等」であった。
\(f:G \rightarrow K\)を\(f(x)=x+1\)とおくと全単射になっている。
これはB君が言っていた0には1,2には3,4には5という対応のさせ方である。
本当に全単射になっているかをチェックする。
\(f\)が単射であるかは「任意に\(x,y\in G(x \neq y)\)をとってきて,\(f(x)\neq f(y)\)」となればよかった。
今回は\(x \neq y \Leftrightarrow x+1 \neq y+1 \Leftrightarrow f(x) \neq f(y)\)となるので単射であることがわかる。
また\(f\)が全射であるかは「任意に\(s \in K\)をとってくると、ある\(x \in G\)が存在して\(f(x)=s\)」となればよかった。
今回は\(\forall s\in K\)について\(s-1 \in G\)となり\(f(s-1)=s\)となるので全射であることがわかる。
よって\(G\)と\(K\)は対等である。(\(G \sim K\))
すなわち\(G\)と\(K\)の濃度は等しい。(\(|G|=|K|\))
では、2つ目の質問はどうだろうか。
結果だけをいうと実は自然数と奇数の濃度は等しくなる。
是非とも定義に立ち返りながら確認していただきたい。
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