あらすじ
前回はコンパクトの定義とイメージを解説した。(詳しくは位相空間におけるコンパクト性)
コンパクトの定義は以下のようであった。
ざっくり言うと「好きなように開集合をとってきたとしてXを覆う。
その開集合たちをエコな人が捌くと有限個まで絞ってXを覆うことができる。」ということだ。
この時、好きなようにとる時に、有限個とってきたら捌くまでもなくOK.
今回は好きなように開集合をとる時に無限個持ってきた場合について考えていく。
具体例1
\(\mathbb{R}\)について全ての開区間を基底とする位相を定める。
(これを\(\mathbb{R}\)の通常の位相とよぶ。)
この時\(A=[0,100]\)について相対位相を定める。
(基底の要素は\((a,b),[0,c),(d,100),[0,100]\)のどれかの形をしている。)
この時\(A\)の開被覆として\(\{[0,1)\} \cup\{(99,100]\} \cup\{(a,a+1)|a\in (0,99)\}\)
を考える。
これは有限部分開被覆を持つか。
これは今までと違い、開集合が\((1,2),(\frac{1}{2},\frac{3}{2}),(\sqrt{2},\sqrt{2}+1)\cdots \)と無限にある。
ここから自分がエコな人になった気持ちで捌いていく。
基本的に\([0,1]\)と\((1,2),(2,3),(3,4)\cdots ,(98,99)\)と\((99,100]\)と捌こうというアイデアがある。
こうすることで101個、つまり有限でXを覆うことができると考える。
しかし、残念ながら、隙間に存在する\(2,3,4,\cdots ,99\)を拾い切れてないので、Xを覆い切れてない。
そのため、補修工事として、\((\frac{1}{2},\frac{3}{2}),(\frac{3}{2},\frac{5}{2}),(\frac{5}{2},\frac{7}{2})\cdots ,(\frac{197}{2},\frac{199}{2})\)を付け加える。
こうすることで\(101+100=201\)個、つまり有限でXを覆うことができると考える。
厳格な方には、201個よりもっとエコにできるじゃないかと突っ込まれてしまいそうだが、
コンパクトで確認したいのは、有限個か無限個かに価値基準をおいているので、201個からもっと少なくするかどうかは興味がない。
このように開被覆が有限部分開被覆を持つかを全てチェックしないとコンパクトとは言えない。
具体例2
\(\mathbb{R}\)について全ての開区間を基底とする位相を定める。
(これを\(\mathbb{R}\)の通常の位相とよぶ。)
この時開被覆として\(\{(a,a+1)|a\in \mathbb{R} \}\)を考える。
これは有限部分開被覆を持つか。
これは、\(^{\forall}x \in X\)について\(x \in(x-\frac{1}{2},x+\frac{1}{2})\)となるので,\(\{(a,a+1)|a\in \mathbb{R} \}\)は開被覆である。
先程と同様にエコな人が捌こうとしたら\(\cdots,(-1,0),(\frac{-1}{2},\frac{1}{2}),(0,1),(\frac{1}{2},\frac{3}{2}),(1,2)\cdots\)と
開集合を選べば、部分開被覆を考えることはできる。
しかし、どう頑張っても有限個まで絞ることができない。
イメージで物事を語りたくない人は有限個であることを踏まえて下を参照して欲しい。
「開集合\((c,d)\)の\(c\)側で最小値が見つかり、\(d\)側で最大値が見つかる。
そしたら\(d+1\)は絶対に入らないので、有限部分開被覆は取れない。」
だから実数全体の集合\(\mathbb{R}\)は通常の位相でコンパクトではないことがわかる。
おまけ
具体例2のようにコンパクトを否定することは肯定するよりも簡単である。
「この開被覆は有限部分開被覆を持ちませんよ。」と1つ例を出せばいいからだ。
具体例1のように高々1個確認しただけで、コンパクトであるとはとても言えなくて、
全ての開被覆のパターンに対し「こうしたら有限部分開被覆を取れますよ。」と示す必要がある。
(実は今回の具体例1は本当にコンパクトになる。証明してみてもらいたい。)
だから「\(\{X\}\)という開被覆を考えればいい。」という考えはコンパクトの議論には全く役に立たない。(これは初学の頃に私が考えていたミスだ。)
コンパクトのポイントは全ての開被覆のパターンに対し、有限部分開被覆を見つけることである。
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